COLUMN印刷ラボ
紙箱も“ちょっとした防水”なら可能?現場で使える防水対策とは

執筆:福富康一(福ちゃん)/2025-09-09
こんにちは、福富康一(福ちゃん)です。
パッケージ印刷の現場ではしばしば「紙の箱で防水って可能ですか?」というご質問をいただきます。
確かに紙というと水に弱い素材なので、「水に濡れたらすぐダメになりそう」と思われるのも自然です。実際にもし紙箱をいきなり水にドボンと浸せば役目を果たせなくなりますから。
でも、少しの水滴や軽い湿気くらいなら、ちょっとした防水加工を施すことで耐えられることもあるんです。今日は、私の経験をもとに「紙パッケージの防水ってどこまでできるの?」というテーマでお話しします。
ただし、ここでお伝えする内容は性能を保証するものではありませんので、実際に導入される際には必ずテストをして効果を確認してくださいね。
防水についての考え方
まず先にお伝えしておきたいのは、「本当に水に浸しても大丈夫な“完全防水”の紙箱は存在しない」ということです。
紙は水を吸う素材である以上、水中に沈められるような防水性を期待するなら、紙ではなくプラスチック素材(たとえばユポなど)に頼るしかありません。
ですが、「ちょっとの水滴くらいなら平気な紙箱」は、加工の工夫次第で十分可能です。そのためには、「どこまで防水したいのか」をまず明確にすることが大切です。

消化綿加工
たとえば、冷たい飲み物の容器から水滴が落ちて箱にポタポタ当たった場合。普通の紙ではすぐシミになりますが、「消化綿加工」と呼ばれる耐水表面処理を施せば、1分以内に拭き取るだけで大丈夫です。私の感覚では、後述するOPニス(オーピーニス)の倍くらいの防水性能があるように感じています。ただし、表面の摩擦には弱く、擦れると傷つきやすい点は注意です。つまり、軽い水滴程度の場面なら、もっともシンプルでコストも中くらいで抑えられる方法です。
PP貼り
「もう少しスレにも強くしたい」という場合は、PP貼り(透明フィルム貼り)が有力な選択肢です。PPフィルムは水を通さず、表面が丈夫になるため、側面に水滴が当たっても側面に染み込むまでに素早く拭けば問題ありません。ただしPPフィルムが貼られていない箱の縁や底面は防水にならないため、そこから水が浸入する点は理解しておきましょう。
OPニス加工
もっとライトな方法としては、OPニス加工があります。これは紙の表面に薄くニスを塗るもので、20秒程度なら水滴に耐えられる性能。それ以上放置するとじわじわとしみ込むため、短時間の使用なら十分なコストパフォーマンスです。
冷凍と冷蔵の違い
もうひとつ、冷凍と冷蔵では紙の耐久性が大きく異なる点にご注意ください。
冷凍では水分が凍るため結露が起こりにくく、紙へのダメージは比較的小さいです。
一方で冷蔵庫に入れたり出したりする際には結露が発生し、その水分が側面や底面から浸入してしまい、紙箱がヘナヘナになったり紙ラベルがシワシワになることが多く、これが紙パッケージでは最大の敵といえます。
たとえ防水加工を施しても、結露による裏面への水の侵入には対応できるとは言えません。冷蔵環境で使用するには、ユポといったプラスチック素材の使用を検討いただくのが現実的です。
なお、大洋印刷では食品に直接触れる紙製容器(いわゆる紙コップやトレー)については取り扱っていませんので、その点もご了承ください。そういった用途では別の素材や高度な加工が必要になります。
まとめ
まとめると、軽度な水滴対策には「消化綿加工」、スレ耐性も欲しいなら「PP貼り」、手軽さを重視するなら「OPニス」がおすすめです。ただし、冷蔵環境での使用は避けるか、プラスチック素材を検討するようにしてください。用いる加工は、「どんな環境で」「どこまで濡れてもいいのか」によって選ぶのが適切です。
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