COLUMN印刷ラボ
打ち合わせ方法
「本機校正」でパッケージ印刷を思った通りに仕上げるコツ

執筆:福富康一(福ちゃん)/2025-09-03
本機校正とは何か
こんにちは、大洋印刷の福富康一(福ちゃん)です。今日は「本機校正」についてお話ししたいと思います。
本機校正という言葉は、印刷に慣れていない方にとって耳慣れない言葉かもしれませんが、パッケージの仕上がりを大きく左右する重要な工程のひとつです。
本機校正とは、その名の通り「本番で使う印刷機を用いた校正」のことを指します。校正にはさまざまな方法がありますが、本機校正はもっとも完成品に近い状態で印刷を確認できる手法です。本番と同じ印刷機、同じ用紙、同じインキを使用し、実際に刷り出してみることで、完成後のパッケージがどのように見えるのかを事前に確かめることができます。

画面では分からない仕上がりの差
最近はデザイン作業の多くがデジタル化され、モニター上での色確認が当たり前になっています。しかし、実際に紙に刷ったときにモニターの色と同じように見えるかというと、必ずしもそうではありません。たとえば、画面上で鮮やかに見えた赤が、実際の板紙に印刷すると少し沈んで落ち着いた印象になってしまうことがあります。これは紙の白さや厚み、表面のコーティング状態などが影響しているからです。
さらに表面加工を加えると、印象はまた大きく変わります。マットPP加工を施すと色味はやや沈み、落ち着いた雰囲気になります。逆にグロスPPではツヤが増して彩度が強調され、華やかな印象を与えます。箔押しやエンボス加工などを組み合わせれば、光の反射や陰影によってデザイン全体の雰囲気がガラリと変わることもあります。こうした違いを事前に確認できるのは、本機校正ならではのメリットです。

簡易校正や本紙校正との違い
校正にはいくつかの方法があり、代表的なのが簡易校正と本紙校正です。簡易校正はオンデマンドプリンタを用いることが多く、手軽に色味やレイアウトを確認できますが、印刷機の挙動や紙の特性までは再現できません。本紙校正は実際の用紙を使うので紙色の影響は確認できますが、印刷機が本番と違う場合には濃度や網点の再現が異なってしまうことがあります。
それに対して本機校正は、本番とほぼ同じ条件で印刷を行うため、完成品との誤差が最小限になります。つまり「最も信頼できる確認方法」と言えるでしょう。

コストと時間の負担
ただし、本機校正にはデメリットもあります。本番と同じ準備を行うため、版の出力、機械の段取り、インキの調整などに手間がかかります。用紙も数百枚単位で消費する場合が多く、時間や人件費を含めてコストが発生します。そのため、すべての案件で本機校正を行うのは現実的ではありません。必要な場面を見極めて活用することが大切です。

本機校正が役立つケース
本機校正が特に効果を発揮するのは、失敗が許されない案件です。たとえば数万個単位で生産するような大ロットのパッケージでは、一度ミスが発生すると損失も大きくなります。また、高級品のパッケージのように色や質感がブランドイメージを大きく左右するケースでも有効です。
特色インキを使用する場合や、広い面積にベタを刷る場合、あるいは繊細なグラデーションを再現する場合も、本機校正で事前に確認しておくと安心です。さらに、既存製品との色を合わせる必要がある場合や、シリーズ商品で統一感を求められる場合にも、本機校正は役立ちます。
本機校正が不要な場合もある
一方で、必ずしも本機校正が必要ではない場合もあります。初めてのパッケージで、まずは形状やサイズ感だけを確認したいときは、白い紙を使ったダミーで十分です。色味を確認するだけなら簡易校正や本紙校正で代用できる場合もあります。つまり、目的に応じて最適な校正方法を選ぶことが重要なのです。
段階を踏んだ進め方
私のおすすめは段階を踏んで進める方法です。まず展開図や白ダミーを使って形状を確認し、次に既存品やカラーチップを用いて色の基準を共有します。そのうえで、どうしても不安が残る部分について本機校正を行えば、コストを抑えながらも十分な安心感を得ることができます。すべてを一度に完璧にしようとせず、重要なポイントに絞って実施することが「失敗しないパッケージづくり」につながります。

初めての方ほど安心につながる
本機校正の有無で悩まれるお客様は少なくありません。特に初めてパッケージを作る方にとっては、完成品を手にするまで「本当にイメージ通りに仕上がるのだろうか」という不安が大きいものです。その不安を解消する最も有効な手段が本機校正であり、安心して本番に進めるための投資と考えていただくと分かりやすいでしょう。
印刷の奥深さを理解するきっかけに
印刷は「紙 × インキ × 加工」の組み合わせによって仕上がりが変化する、とても奥深い世界です。本機校正は、その複雑さを理解し、完成品の姿をより具体的にイメージするための重要なプロセスです。仕上がりに対する不安を減らし、納得感を持って本番に臨むためにも、本機校正を検討する価値は十分にあります。
もし「どこまで確認しておけばよいのか分からない」と迷われているなら、ぜひ大洋印刷にご相談ください。案件ごとに最適な段取りをご提案し、安心して進行できるようサポートいたします。