COLUMN印刷ラボ
木型
木型は兼用できる?──兼用が可能になる「3つの条件」と注意点【パッケージ印刷】

執筆:福富 康一(福ちゃん)/最終更新:2025-08-25
「この木型、別案件でも使えますか?」―― トムソン等の打ち抜き加工でよくいただくご相談です。
結論としては、条件が揃えば兼用できる場合があります。
一方で、 紙や面付け、機械条件が合っていないと、 折れ不良・背割れ・バリ・寸法公差逸脱などにつながるため、 現場での確認と試作を前提に判断します。 そこで今回は、木型を複数の案件で兼用するための3つの条件をご紹介します。 せっかく作った木型。 うまく兼用して、コスパよくオリジナル紙パッケージを作りましょう。
木型は兼用できる?──兼用が成立する「3つの条件」

ここで言う木型(抜き型)とは、 刃・罫線・ミシン目を木台に組み込んだトムソン木型を指します。
木型は、印刷方式や打ち抜き方式(平版/輪転 等)、台板サイズ、刃高、受け面仕様が異なると互換性はありません。
兼用が成立する代表的な条件は次の3点です。
- 1.同じ紙(紙種・厚み・繊維方向)であること 折れ精度に効く罫線(折りスジ)の最適値は紙によって変わるため、基本は同一または同等仕様の紙が前提となります。紙厚が「1ランク違い」程度なら面切りテープ等で吸収できる場合もありますが、量産前に試作検証が安全です。
- 2.同じ面付け(丁付け)・設計条件であること 面付け数や見当基準が変わると、型の位置関係・通し枚数が変わり、実質的に作り直しが必要になることがあります。兼用には同一の面付けレイアウト・見当基準が必要です。
- 3.同じ機械条件(方式・台板サイズ・刃高規格)であること 平版/輪転の方式差、受け面の違い(ベルト/スチール)、刃高規格、台板サイズがズレると互換不可です。できれば同一工場内の同系機が安心です。
要点:「同じ紙」「同じ面付け」「同じ機械」。この3条件が同じであれば、木型を兼用することが可能です。この3条件のいずれかがズレる場合は、新規作製や改造を検討しましょう。
現場での確認プロセス(チェックリスト)
- 紙種・斤量(号数)・板厚・繊維方向(タテ/ヨコ)が一致している
- 面付け数・罫線/丁数・見当基準が一致している
- 方式(平版/輪転)、台板サイズ、刃高、受け面仕様が一致している
- 過去品の品質記録(背割れ・バリ等)、段取り条件(面切り厚・圧・見当)を参照し再現可能
- スポンジ劣化・罫割れリスク・センサー位置等の安全面に問題がない
よくある質問
Q. 紙の厚みが1ランク違うだけなら、兼用できますか?
限定条件で可能な場合があります(面切りテープ等で調整)。ただし不良リスクが上がるため、必ず試作検証してください。
Q. 他社で作った木型の持ち込みは使えますか?
台板サイズ・刃高・受け面などが一致し、設計データと安全要件が満たされれば使用可の例もありますが、現場検証が前提です。ほとんどの場合で不具合が生じるため、基本的には不可能です。
Q. 段ボール→板紙(または逆)の流用は?
罫線仕様が大きく異なるためできません。用途に合わせた新規設計をご提案します。
まとめ
木型の兼用は、同じ紙・同じ面付け・同じ機械が揃えば成立します。どれかが異なる場合は品質・生産性・安全性に影響しやすいため、条件を整理し、小ロットの試作で最終判断するのが安全です。
図面・紙仕様・想定ロットをお知らせいただければ、最適な進め方をご提案します。